アニメ産業はモバイルゲームで本当に4000億円儲かっているのかざっくり計算してみた

マクロなアニメ業界の情勢を調べるとき、自分はいつも日本動画協会が毎年発表している『アニメ産業レポート』を参考にしています。
しかしこの産業統計にはアニメ作品が元となったスマホゲームからの収益は含まれておらず、
実際にアニメはスマホゲームでどれくらい儲けているのか気になっておりました。
アニメ産業レポートには「アニメ関連スマホ市場は推定4,000億円を超えているとみられる」との記載もあるのですが、これがどのようにして算出された数字なのかが分からなかったため、
ゲーム業界に詳しい知人の話も参考にしながら自分なりにざっくり(本当にざっくり!)推計してみました。

計算の流れ

1、世界のゲーム市場トップ3である中国、アメリカ、日本のモバイルゲーム市場を調べる
2、上記3ヶ国のモバイルゲームの収益トップ100のアプリ中、日本アニメ由来のゲームの割合を調べる
3、3カ国それぞれのトップ100タイトル内の日本アニメ由来ゲーム収益を算出して合算
では早速やってみましょう!

世界のゲーム市場規模

ゲーム市場調査会社『Newzoo』によると、世界のゲーム市場は2019年で1520億ドル、日本円にして15兆円ほど。
そのうち約50%弱がモバイルゲームによるもの(=モバイルゲーム市場は7兆円ほど)だとされています。
(Source : https://newzoo.com/insights/articles/the-global-games-market-will-generate-152-1-billion-in-2019-as-the-u-s-overtakes-china-as-the-biggest-market/
『ファミ通モバイルゲーム白書2020』でも世界のモバイルゲーム市場は7兆1480億円と推計されているので、だいたい7兆円という数字には信憑性があると見てよさそうです。
(Source :  https://www.famitsu.com/news/202001/29191590.html
一方、世界トップ3の中国、アメリカ、日本それぞれのゲーム市場規模は、
中国$36,540M(約3.6兆円)、アメリカ$35,510M(約3.6兆円)、日本$18,683M(約1.9兆円)となってます。
(Source : https://newzoo.com/insights/rankings/top-10-countries-by-game-revenues/
この半分がモバイルゲームだとすると、
各国のモバイルゲーム市場は中国1.8兆円、アメリカ1.8兆円、日本約1兆円くらいだと考えられます。

世界各国の収益トップ100ゲームアプリの中に日本のアニメ由来のものはどれくらいあるのか

App Annieで各国2020年4月4日時点のiphoneのゲームカテゴリアプリ収益ランキングTOP100を調べてみました。なお、中国ではAndroidユーザーも多いですが、今回はiphoneのランキングのみを対象としております。
その結果は以下の通り。
<中国> 
日本アニメ由来のモバイルゲームランクイン数 6/100
12 火影忍者(NARUTO)
48 航海王:燃焼意志(ONE PIECE)
58 Fate/ Grand Order
59 灌篮高手 正版授权手游(スラムダンク)
75 龙珠激斗 (ドラゴンボール)
86 一拳超人:最强之男—正版授权回合制手游(ONE PUNCH MAN)
<米国> 
日本アニメ由来のモバイルゲームランクイン数 5/100
12 Pokemon Go
32 ドラゴンボールZ ドッカンバトル
34 七つの大罪 光と闇の光戦
43 Fate/ Grand Order
78 遊戯王 デュエルリンクス
<日本> 
日本アニメ由来のモバイルゲームランクイン数 34/100
1 モンスターストライク
4 Fate/ Gand Order
9 パズル&ドラゴンズ
12 ドラゴンボールZ ドッカンバトル 
15 七つの大罪 光と闇の光戦 ※開発は韓国のNetmarble
16 あんさんぶるスターズ
19 バンドリ!
20 シャドウバース
21 アイドルマスター シンデレラガールズ
25 遊戯王デュエルリンクス
26 プリンセスコネクト!
27 白猫プロジェクト
29 妖怪ウォッチ
34 この素晴らしい世界に祝福を!
35 アイドルマスターシャイニーカラーズ
38 ジャンプチヒーローズ
39 キャプテン翼〜たたかえドリームチーム〜
40 ONE PIECE トレジャークルーズ
41 ヒプノシスマイク -A.R.B-
44 北斗の拳 LEGENDS ReVIVE
47 ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル
52 グランブルーファンタジー
59 アイドリッシュセブン
60 #コンパス
64 ソードアート・オンライン アリシゼーション
66 マギアレコード
67 デュエル・マスターズ プレイス
72 アズールレーン
74 A3!
78 誰ガ為のアルケミスト
83 アイドルマスターミリオンライブ!
84 聖闘士星矢 ゾディアックブレイブ
85 魔界戦記ディスガイア
91 とある魔術の禁書目録 幻想収束
※16位ランクインの『あんさんぶるスターズ』は、App Annie上での開発国は中国となっていますが、実際はHappy Elementsの日本支社での開発ということですので、含んでいます。
72位『アズールレーン』のYostarは中国企業の印象が強いですが、AppAnnie上では開発国日本となっていたのでこちらも含んでいます。
※『魔法使いの約束』や『ツイステッドワンダーランド』など、今後アニメ化の可能性が高いIPでも、現状未発表のものは外しています。
なお、日本アニメ由来のモバイルゲームランクイン数とざっくりまとめましたが、
もちろんこれらの中には最初にゲームがあって後にアニメ化されたものや、
アニメとゲームのメディアミックス展開を前提に企画されたものなども含まれています。
パズドラやモンストに関してはアニメはゲームのPRみたいなものですし、
これらを一様に「アニメがスマホゲーム化で稼いでいる事例」としてカウントするのは乱暴ですが、
今回は同作品のアニメが存在するゲームを全てカウントしました。

3カ国それぞれの日本アニメ由来ゲーム収益を算出

20:80の法則(20%の商品が売上全体の80%を占めているというマーケティング理論)により、トップ100タイトルがモバイルゲーム収益全体の8割を占めていると仮定し、
中国、アメリカ、日本それぞれのトップ100のゲームの売り上げを推計します。
中国:   1.8兆円×80%×6% = 約860億円
アメリカ: 1.8兆円×80%×5% = 約720億円
日本:   1兆円×80%×34% =  約2720億円
これらを足し合わせると、4300億円となります。
これはあくまでトップ100のゲームからの算出であり、
また中国+アメリカ+日本のモバイルゲーム市場(4.6兆円)は全世界の市場(7兆円)の約2/3なので、
全世界市場で見る場合にはこの割合で割り戻す必要があるかもしれませんが、
アニメのメイン市場が日本・中国・北米であることを考えると、
残り1/3の世界市場ではアニメ由来ゲームの売り上げの割合はこの3ヶ国ほど高くないと考えられますので、
日本アニメがモバイルゲームからどれくらい儲かっているのかという冒頭の問いへの答えは、
約4000億円と、アニメ産業レポートの数字通りと考えて良さそうです。

補足:モバイルゲーム収益の実際どれだけがアニメ産業に入ってくるのか

厳密に言えば、上記モバイルゲーム収益はゲーム会社が儲けた金額なので、そのうち実際にアニメ産業に入ってくるのは、各作品のビジネスモデルごとに、以下の金額となります。もっとも、ゲーム業界をアニメ産業と分けて考えるのはもはやナンセンスですが…。
パターン① ゲーム化権ライセンスによるロイヤリティ収入
パターン② アニメ制作費収入(ゲーム発企画、または国外IPの日本でのアニメ化)
分かりやすく言うと、①は「もともとアニメが先にあり、ゲーム会社にゲーム化する権利を許諾することで受け取る対価」です。
この場合のロイヤリティ収入(ゲーム会社の収入のうち、アニメの権利者側に支払われる額)は、だいたい総収入の5%〜10%ほどと想定されます。
ロイヤリティベースなので、ゲームがヒットすればそれだけアニメ側にもお金が入ってきます。
②は、ゲーム会社がプロモーションのためにアニメを作るパターンです。
この場合には、ゲーム会社はアニメの制作費(一話あたり2000万程度)のみを支払う、または製作委員会を構成し一部出資するけれどゲームからの収入は委員会各社に配分しないなど、ゲームのヒットとアニメ業界の収入が必ずしも比例しないケースも多いです。
このように、作品ごとの契約や座組みによって状況が異なるので、一概に、ゲーム収入の◯%がアニメ産業に入ります、とは言えません。
また、ここで言うアニメ産業はいわゆる広義のアニメ市場なので、アニメ制作会社の収益=狭義のアニメ市場となると、今回計算した額よりも小さくなるでしょう。

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