英語圏二次創作投稿サイトAO3の使い方

海外での人気アニメ作品動向を探るオススメサイトを5回連続で紹介してみるシリーズ第3弾。
前回までは海外のアニメトレンドを概覧するのに便利なデータベースサイトや配信プラットフォームについて紹介しましたが、
今回から2回に分けて、よりディープな海外アニメファンカルチャー……作品ファンの熱量が如実に現れる二次創作の投稿サイトの使い方について紹介したいと思います。

1. MyAnimeList
2. bilibili 
3. Archive of Our Own ← 今回はこちら!
4. LOFTER
5. MyDramaList

投稿数を調べて盛り上がりをリサーチするのもよし、いちファンとして作品を投稿&閲覧して楽しむもよし。
今回は欧米編、英語圏最大の二次創作小説投稿サイト『Archive of Our Own』、通称AO3についてです。

FanfictionとArchive of Our Ownについて

英語圏では二次創作イラストはFanart、二次創作小説はFanfictionと呼ばれます。
Fanfictionの投稿サイトとして最も人気なのが、『Archive of Our Own』(以下AO3)です。

ao3 icon

◾️サイト名:Archive of Our Own
https://archiveofourown.org
◾️言語:主に英語
◾️サイト属性:二次創作(主に同人小説)投稿サイト

AO3は非営利団体「Organization for Transformative Works」により、主にファンからの寄付で運営されています。
数年前までは『fanfiction.net』や『Livejournal』と呼ばれるサイトも広く使われていたのですが、クオリティの低下や運営企業の買収などによってファンが離れ、今はAO3が一番メジャーになっています。
なお、この記事では詳しく触れませんが、同人イラストであるFanartはTumblrやTwitterにあげることが多いです。
Tumblrが一昔前まで優勢でしたが、近年規制が強化され、R18作品や、それを窺わせるタグの使用が禁止されたため、同人作家がTwitterに流れてきました。(例:英語圏でのR18にあたる表記である『#NSFW』…Not Safe For Work=職場で見ちゃいけない、というタグ及びコンテンツが禁止されている)

2020年6月時点で、AO3の扱うジャンルは3万6千に渡り、6百万を超える同人小説が投稿されています。
運営団体「Organization for Transformative Works」は、2019年、同人小説というファンカルチャーを育んできた功績を評価され、優れたSF・ファンタジー作品や関連人物に贈られるヒューゴー賞の関連書籍部門(Best Related Works)を、同賞史上初めて団体として受賞しました。

Archive of Our Own(私たちによる、私たちのためのアーカイブ)というネーミングからも、二次創作文化を愛する運営側の気持ちが伝わってきます。

私は同人小説大好き人間でして、マイナーCPにハマりがちなこともありPixivの日本語作品だけだと満足できず、以前よりAO3の英語同人小説を読みふけってきました。
日本でも見つけられなかったような好みどストライクの小説をAO3で見つけた時は、人類皆兄弟……と本能レベルで感動してしまいます。

それに加えて自分がAO3を好きなのは、とにかくコメントが多いこと。
AO3は読者から書き手へのリアクションがびっくりするほど盛んで、
それも「ここが好き」「あそこが最高」と長文で想いの丈をぶつけるファンの方がたくさん。書き手の中にはあえて批判や改善点の指摘を読者から募集し、次回作に活かすようにしている方もいます。

私は以前、英語圏の読者の方から、同人小説を翻訳したいとのお声がけをいただいたことがあり、一度だけ小説を英語でAO3にアップロードしたことがあるのですが、「続きが楽しみ!」「このシーンがいい!」などのコメントがどんどんついて、とても元気づけられました。

日本ではシャイな方が多いので、人に感想を伝えるのを遠慮してしまう方が多いのだと思いますが、海外の方は本当に『好き』の伝え方が積極的で、何より、同じジャンルやCPを愛する書き手を応援しようというパッションに溢れていると感じます。

自分は過去数年、海外ではあまり人気のないCPにハマっていたので趣味面ではAO3から離れてしまっていたのですが、
近頃、英語圏でもファンの多いアニメ作品にハマったこともあり、AO3のヘビーユーザーへと舞い戻ってしまいました……。

使い方説明のはずが、思わずAO3愛を長々と書き連ねてしまいました。

では以下で使い方を説明します。

AO3への登録方法

こちらがAO3のトップ画面です。

AO3 login

会員登録しなくても作品を閲覧できますが、一部作品は会員限定公開されていること、またブックマークなどの機能を使うためには登録が必要であることから、アカウント作成をオススメします。会員登録は無料です。

AO3はコミュニティサイトなので、登録のためには招待を受ける必要があります。

招待を受ける方法は2つ。

①サイトからの招待を受ける

トップ画面の「Get Invited」(上の画像で赤丸で囲っている部分)のボタンを押すと、以下のページに遷移します。

AO3 invitation

こちらにメールアドレスを登録すると、登録希望者のwaiting listに追加されます。
このリストのアドレスをサイト側が順番に承認して登録用のリンクを送ってくれるので、あとはそのリンクから登録を済ませるのみです。
一日最大5000人が承認されており、現在何人がwaiting listにいるかを確認することもできます。
五、六年前ですが、自分の記憶だと、申請から一週間以内には承認された覚えがあります。

②別の会員からの招待を受ける

知り合いに既存のAO3ユーザーがいる場合、その人から招待リンクを送ってもらえば、サイトの承認を待つことなくすぐに登録できます。
ただし、各会員は無尽蔵に知り合いを招待できるわけではなく、招待リンクを送れる数は限られています。この招待リンクの残数はサイトの周年記念や、作品投稿数などに応じて追加で付与されることもあります。

スパムアカウント対策だそうなのですが、秘密のサロンみたいで面白いですよね。

AO3での作品の探し方

さて、登録が済んだら早速同人作品を検索してみましょう。

こちらが会員登録後のトップページ。

AO3 top page

右上の「Hi, 〇〇!」と書かれたところをクリックすると、マイページに飛部ことができます。
ブックマークした作品の確認などはマイページから行えます。

タグやキャラクター名による作品探しは右上の検索バーから直接行えますが、
以下では左側のグローバルメニューを使用して作品の詳細検索を試してみましょう。

●Fandoms

ファンダム=〇〇ファンの集団/ファンカルチャーを表します。日本語のクラスタに近いですが、もう少し意味の範囲は広いイメージです。

AO3 fandom list

Fandoms>All Fandoms を選択すると、各分野(アニメ、アメコミ、生モノetc)ごとの投稿数トップ5作品を見ることができます。
ちなみにAO3で一番作品数の多いタイトルはハリーポッターで、25万5千作品が投稿されています。

このページの各分野の右下の「All〜」のボタンを押すか、
右上のグローバルメニューからFandoms>Anime&Manga(またはお好きなジャンル)を選択すると、
その分野の全作品のファンダム一覧を見ることができます。

AO3 anime manga fandom list

各作品の投稿数も一目瞭然ですね。
(Pixivでは、二次創作小説にあえて公式の作品タグをつけずあえて検索除けをする場合も多いですが、英語圏というか、AO3では投稿作を説明するタグをなるべくしっかり用いる文化がありますので、ここで表示される数が投稿数の実態を概ね正確に表していると考えられます)

●Browse

Fandomsの隣のBrowseは、新着投稿や、最近ブックマークされた作品の一覧です。

●Search

個別のCP(カップリング、英語だとShipping)などを検索したい時には、Search>Worksを選びましょう。

AO3 search

以下がWorksの詳細検索画面です。

ページ(1)

AO3 search

Crossover:複数作品のキャラクターが出てきたり、別作品の設定で描かれた作品の同人小説。
日本語圏以上に英語圏ではこのCrossoverが人気なイメージがあります。

Language : 言語
基本英語が多いですが、他の言語で書かれた作品もあります。AO3は翻訳文化があり、ある言語で書かれた作品を、気に入ったファンが(もちろん作者の了承付きで)別の言語に翻訳してAO3に投稿することもあります。

近年中国ファンが自由な創作の場を求めてAO3に一気に流入し中国語で書かれた作品が増えていたのですが、ユーザーの一人が政府に密告し、現在は中国国内からのAO3へのアクセスは禁止されてしまったそうです……。

ページ(2)

AO3 search

Fandom:ジャンル/作品名

Auto Suggestion機能もあるので、英語名の正式なスペルがわからなくても途中まで入れたらsuggestしてくれます!

Rating : 年齢制限

AO3 rating


Pixivでは全年齢とR-18だけですが、AO3ではより細かく分かれています。

もちろんどのようにタグ付けするかは作者次第ですが、AO3のガイドラインによると、以下のようになっています。

-Not Rated(制限なし)
※デフォルトではこの「制限なし」になりますが、検索の際には、「Mature」「Explicit」と同様に扱われます。つまり、「General Audiences」に絞って検索した場合、「Not Rated」の作品は検索結果には出てきません。

-General Audiences(全年齢向け)

-Teen And Up Audiences(ティーンズ以上向け)
13歳以上向け推奨。キスやボディタッチが含まれている作品。

-Mature(成人向け)
セックスや暴力をテーマに含む作品。

-Explicit(過激コンテンツ)
あからさまなエロ描写、暴力描写が含まれる作品。

Relationship:カップリング(CP)
英語圏ではカップリングのことをRelationship、またはshippingと呼びます。
日本ではA×Bのようにキャラクターを掛け算しますが、海外では/(スラッシュ)で繋ぎます。
そのためBL小説のことは、Slash Fictionと呼ばれます。

なお、ここで要注意なのですが、海外では受け攻めの記載順序に日本のようにはこだわりません。

AというキャラクターとBというキャラクターであれば、Aが攻めでも受けでも、同じようにABと書きます。
どちらのキャラクターが手前に来るかには、これという決まりはなく、語感や、なんとなく攻めっぽいキャラクターが前に来る傾向がありますが、表記ぶれも多くあります。
AB、BAどちらの記載順になるかは、検索ページの「Relationship」の欄でキャラ名を入れると、そのキャラを含むshippingの一覧が表示されるので、そこで把握することができます。

ABと書かれていて読んでみたら、実際にはAが受けだった……とか、同じ作品内でABが立場を入れ替えるいわゆる「同軸リバ」、ということも多かったり。
日本ではたびたび、どちらが受け攻め論争だとか、ABとタグづけされた作品に「素敵なBA」とコメントする是非などが議論になっているのを目にしますが、

英語圏においては、そもそも受け攻めという概念や、そこへのこだわりが日本ほど強くないようです。

この理由についてはよく海外のアニメファンの友人とも不思議だよねと話すのですが、
一つにはpolitical correctness(ポリコレ)と呼ばれる、「政治的社会的問題の観点から物事はかくあるべき」という暗黙の了解によって、関係性は対等であるべきで、一方に「攻め」や「受け」の役割を押し付けるべきではない、という価値観を英語圏の人々が持っていることが一因ではないかと考えています。

なお、セックスの際のポジションを明確にしたい際には、攻め(挿入する側)をtop、受け(される側)をbottom、と記載します。

たとえばABのshippingだけど、受けになるのはA、ということを明示したい場合には、
ABというタグをつけた上で、A bottom、というタグを足したり、作品概要欄にA bottomと記載するのが習わしですが、
そうしたタグ付けが義務化されているわけでもなく作家次第なので、実際に読んでみないことには分からないというのが正直なところです……。

攻めっぽいキャラを受けにしがちな自分は、10作品読んで1作品、希望通りの受け攻めの順序になっているかどうかという状況でして、いつも宝探しをしている気分になります。だからこそ見つけた時にはkudos(いいね)しまくります。
日本だと割に多い、受け攻め逆のものが苦手ないわゆる「固定」派の方々にとってはなんとも検索が難しい環境ですね……。

ちなみにもちろん、キャラ同士ではなく、キャラとユーザー間のいわゆる「夢小説」もAO3には上がっています。
その場合には、Relationship欄で「キャラ名/Reader」と入れて検索してみてください。

ページ(3)

AO3 sort

Kudos(いいね)数やBookmark数で絞りたい時には、「<」や「>」を使って検索してください。
ブクマ100以上の作品に絞る場合には「>100」のように。
もっとも、マイナーCP好きにはそんなことしてる余裕ないのですが……。

Sort byでは、並び順を指定することができます。
Sort directionでは、Ascending(昇順)かDescending(降順)かを選べます。

AO3の検索結果一覧と作品アイコンの見方

さて、では実際に検索してみましょう。

サンプルとして、海外で人気のある『NARUTO』のナルトとサスケのペアで検索し、ブックマーク順にソートしてみます。

AO3 search result

7500件ほどヒットしました。この二人だと、記載方法は「Uchiha Sasuke/Uzumaki Naruto」の順になるようです。

まずおそらく驚くのは、作品タグが多いことでしょうか。
Pixivだと各作品10個までとタグの数が決まっていますが、AO3はいくらでもタグ付けすることができます。

上で英語圏のファンは受け攻めの順序にこだわらないと書きましたが、その代わりと言いますか、英語圏にはその作品の傾向や含まれる要素、プレイの内容などをタグでなるべく明確化するカルチャーがあります。

つまり、どんなキャラクターが出て来るのか、死ネタが含まれるか、暴力表現があるか、家族間の問題が扱われるのか、原作通りか、喧嘩するか、トラウマはあるか、乱暴な言葉遣いをするか、どんなプレイをするのか……さらにインスタグラムやTumblrのタグのように、タグでノリツッコミというか、「〇〇な気持ちで書いた」「でも××だけどね」のように呟いてみたり、とにかく何十個もタグをぶら下げた作品が多いです。

英語圏では、日本以上に、ショタ要素や暴力表現などに対してセンシティブなところもあり、自衛を促す意味も含め、「読むなら自己責任で」と先手を打ってタグ付けしておくようです。

さて、AO3の作品にはどれも、作品名の横に四象限に分かれた四角いアイコンがついています。

AO3 icon

左上から右周りに、
①年齢制限/②関係性傾向(へテロ?BL?GL?恋愛関係無し?)/③完結しているか否か/④警告(暴力表現有無など)
を表しています。

それぞれの意味は上のSearchで説明した通りで、このアイコンの場合には、
「①成人向け/②男性同士のshipping③完結済み④警告を明示しないことを作者が選択している」という意味になります。

それぞれの意味はこのアイコンをクリックするとポップアップで説明が出てきますし、
一覧をhttps://archiveofourown.org/help/symbols-key.htmlからも確認できます。

では個別の作品ページに飛んでみましょう。
こちらがページの上部です。

AO3 work page

AO3では、各作品ページ右上のDownloadボタン(赤丸で囲ったところ)から、作品をPDF形式でダウンロードできます。

そのほかにもしおり機能(Mark for Later)や、連載作品の購読機能(Subscribe)などもあります。

そしてこちらが作品ページの下部。

AO3 page bottom

KudosはPixivにおける「いいね!」です。作者さんのためにも気軽にどんどん送ってください!
コメント文化が盛んなので、一作品に100以上のコメントがつくこともざらにあります。

以上がAO3の基本的な使い方です。
UIは必要最低限ながら、同人オタクが求める機能が盛りだくさん。タブレットや携帯で読めば、英単語検索も単語長押しで簡単にできますし、推しCPの小説を読んで気軽に英語の勉強ができる最高なサイトと言えるのではないでしょうか。

Fanfictionのタグ辞典『Fanlore』

最後に、AO3の運営元「Organization for Transformative Works」が運営している、ファンカルチャーのタグ専門wiki「Fanlore」について紹介します。

上にも書いたように、AO3はタグのお祭り状態です。無数のタグが使われていて、中にはぱっと見では意味がわからないものも多いかと思います。

そんな時に役立つのが「Fanlore」。

fanlore top

このFanloreでタグを検索すれば、大抵の場合その意味を知ることができます。

たとえば「Fix-it」のタグ。直訳すれば「それを直せ」ですが、公式と異なるエンディングを描いた同人小説に、このタグが使われます。いわゆる『If小説』です。推しの死を受け入れられない同人作家、御用達のタグです。お世話になっております。

それから面白いのが、英語圏独自の文章形式
日本でもどのジャンルでもお約束な書き方の形式や設定があると思います。
たとえば「〇〇しないと出られない部屋」「チャット風」「嫌われ」などなど。
AO3でもそうしたファンカルチャー内のお約束な形式や設定というものがあります。
たとえば「5+1things」タグがつけられている話は、Five Thingsという文章構成の亜種で、「6章構成で1-5章までは~だけど最後の6章だけ~となる」という形式に則って書かれた小説。

具体例を出すと、「喧嘩してばかりの2人が5章の間あらゆる場面で口論しているけれど、最後の1章で仲直り」なんて話にこのタグがついています。最高かな。

「#タグ challenge」は、ある特定タグの形式に則って推しCPの小説を書くファン企画、お題ものです。「#5+1 things challenge」は、「推しCPで5+1 things書いてみた!」という意味になります。

以上、英語圏の二次創作小説(fanfiction)投稿サイト、Archive of Our Ownの紹介でした!一度AO3使い始めるとやみつきになっちゃうのでお気をつけを。
面白いタグがたくさんあるので、たまにTwitterでも紹介してゆきたいなと思います。

次回は中国の二次創作投稿サイト『LOFTER』を紹介します。

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