中国の首都北京。
ここにはアジアを代表する名門大学、「北京大学」と「清華大学」がそのキャンパスを置いている。
2015年度版の英Times Higher Education Ranking(世界大学ランキング)では、北京大学が42位、清華大学が47位にランクイン。北京は特に人文系、清華は理工系が強く、卒業生の多くは中国のみならず世界に飛び出して活躍しているとか(参考)。
そんな2つの大学だが、実はその学問的側面だけでなく、アニメクラブの規模の大きさと、そのクオリティの高さでも知られているのだ。
北京大学のアニメクラブはOriginal Fire、中国語で「元火動漫社」という名前だ。OBOGを合わせた総会員数は2000人を超し、北京大学に存在するサークルの中で第二の規模を誇るとも言われている。
一方の清華大学のアニメクラブは「次世代動漫社」というサークル名で、アニメイベントやセミナーを開いたりと精力的に活動している(参考)。OBOGを含めると、こちらもそのメンバーは600人に上るそうな。
2015年12月、自分は東京大学のビジネスコンテストで賞を頂いた関係で北京大学の起業家集団と交流するため、一週間北京に派遣された。
そこで案内役をつとめてくれた北京大学の子がアニメオタクだったことをきっかけに、偶然、この北京大学元火動漫社の17周年記念コスプレパフォーマンスにゲストとして参加させてもらうことが出来た。
今回は、その体験記を交えつつ、北京大学のアニメクラブ「元火動漫社(original fire)」について、紹介したいと思う。
(※今回、なんだか気分で「だ、である調」で書いてしまいました。統一感無くてごめんなさい。)
北京で出会ったオタク、譚ちゃん
PMなんちゃらで有名な、粉塵に包まれし街。
そんなイメージとは裏腹に、私の滞在した12月頭の一週間、しかし北京の上空には、嘘のような青空が広がっていた。
そこで今回東大の起業家志望の学生集団を迎えてくれたのが、北京大学で日本語を専攻している譚ちゃんである。そもそも彼女との出会いが、私と北京大学アニメクラブの縁の始まりであった。
流暢な日本語を操り、眼鏡に笑顔がキュートな彼女の手元を何気なく見やった私は、そこであるものを発見した。
iPhoneケース、Psycho-passの狡噛さんやないですか!!!
普段はコミュ障のくせに相手がオタクと知るや否や強気になる自分はここぞとばかりにアタックをかける。
「Hey, yo!お嬢ちゃん何のアニメが好きなんだい?BLって読んだりする?」
好きなゲームは薄桜鬼新選組奇譚、あ~譚ちゃん名前にも奇譚の譚って入ってるね!しかも土方さん推し!?同じじゃ~ん、乙女ゲーよくプレイするの?などと話すうちにものの十分で私と彼女は打ち解けていた。
北京大学漫画図書館
そんな譚ちゃんが教えてくれたのが、「北京大学漫画図書館」の存在。
なんと北京大学には、明治大学からの寄付で建てられた漫画専門の図書室があるという。それは行かねば!
元々が起業関係のプログラムで来たタイトなスケジュールで、しかも譚ちゃんは東大サイドの代表団と北京大の連絡役を担う重要な役回りだったのだが、ごねる私のために、漫画図書館の管理を行っているという日本語学科の後輩に連絡をとってくれた。
本来五時で閉まるところを、それにはスケジュール的に間に合わない私のために、特別に少し長く開館してくれるという。ありがたい。
そうして喜び勇んで駆けつけた漫画図書館がこちら!
ちなみに、こちらのサイトでは実際に留学された方が沢山の写真と共にレポを書いていらっしゃったのでシェア。
さて、ここで図書館の受付をやっていたその後輩の女の子、聞いてみると北京大学のアニメクラブのメンバーだと言う。
私が東大のコスプレクラブ出身だと言うと、明日の夜に17周年記念パフォーマンスがあるから来ないかと誘ってくれた。
それは行くしか!!
本来は部員向けのチケットが必要なイベントで、そのチケットも既に全て捌けてしまっていたらしいのだが、特別に席を用意してくれるという。
それはますます行くしか!!
但し、イベントの日は丁度自分が北京を離れる前日で、北京大学のお偉いさん方との会食がセッティングされていた日。
しかし諦めきれない。
ここで幸いしたのが、もともと自分が受賞したビジネスプランが、サブカル人材の中小アニメイベント派遣ビジネスとでもいうような、とにかくアニメに関連したものだったことである。
中国のアニメ市場の調査に絶好の機会だ等々の公明正大な理由を挙げ、私は会食を途中退席し、一時間の遅刻ながらも、この北京大学アニメクラブ「original fire」の17周年記念公演に参加する許可を得ることが出来た。
北京大学アニメクラブの圧倒的コスプレクオリティ
パフォーマンスとは聞いたものの、一体どんなものなのか。
期待を胸に会場に駆けつけた私 in 綾波コスプレ。
そう、自分は余興の一環として、北京大のお偉いさんとの会食に、日本から持ってきた綾波レイのコスプレで臨んでおり、そのままの姿でパフォーマンス会場へも来ていた。(ちなみにお偉いさんは初音ミクの動画技術に興味を持ってらしたらしく、その繋がりで結構講評だった。単にみなさんお酒が入っていたからかもしれない)
なお、ここには、サブカルに関心のあるもう一人の東大の友人と、通訳も兼ねてくれている譚ちゃんも一緒である。
会場となっている建物の外まで迎えに来てくれたのは、original fireの元副部長だという「あおい」ちゃん。会場はそこそこ広い劇場形式のホールで、案内された席にびっくり。
どまんまえのど真ん中!
しかもVIPって張り紙がしてある!
ええええええ~!
と、えの一つでもいいたいところだったが、公演中のため謙遜する暇もなく、大人しく席につく。
(追記:後から聞いた事によると、どうやらこの日の前半、名誉顧問の先生がその席に座っていて、私が丁度その方と入れ違いで入場したために、その席に案内してもらえた形だったらしい。納得。)
このパフォーマンスに、私は度肝を抜かれてしまった。
公演は計2時間半程。様々な作品をモチーフにした多様な表現媒体の演目が披露される。
※なお、1月3日現在、進行形で中国からパフォーマンスの正式写真一式を送ってもらっているところなので、宜しければ1月4日以降にもう一度この記事を読んで頂けると、美麗コスプレイヤーさんの写真が大量追加されているかと。
例えば、未来日記を元にしたオリジナルストーリーのコスプレ劇。コスプレは、ウィッグのセットからメイクの仕方、そしてキャラクターらしい演技までまさに微に入り細に入り完成されている。
背景はプロジェクターで投影され、そこには台詞に合わせ中国語の同時字幕が表示される。
台詞は事前に吹きこまれた中国語のものが流れていたのだが、これはなんと北京大にある「アフレコクラブ」なるものが声優を担当しているらしい。
実際にそのキャラクターをしているレイヤーさんと兼ねている場合もあれば、コスプレイヤーと台詞担当が別にいるキャラクターもあった。
いずれにせよ、とにかく凝っている。
というか、愛が詰まっている。
他にも、ブラック★ロックシューターのコスプレでのダンスや、オタクをネタにした漫才もあった。
私が間に合わなかった前半には、刀剣乱舞のパフォーマンスもあったらしい。見れなかったのが残念。
幕間にはアニメに関するクイズ大会もあった。
最後には、OBOG達からのメッセージ動画も流れ、自分は彼らを直接知るわけではないのだけれど、彼らがこのクラブに、アニメに、そして互いに向ける親愛の情の強さに打たれて、なんだかホロリと来てしまった。
今回こうして席を用意してくれて、隣で色々クラブのことを説明してくれたあおいちゃんは、なんと昨年の公演の様子を焼いたCDまでくれた。優しすぎる……‥…!
(これに限らず、北京大学の学生さん達は皆驚くほど優しかった。例えばシャンプーを忘れた私に、わざわざ買ってきてくれたり、ご飯の場で飲み物が足りてるか常に気を配ってくれたり)
残部が無いということで、その場で読ませてもらうにとどまったのだが、部誌として発行されている同人誌がフルカラーでこれがまたクオリティが高かった。掲載されていたのは、コスプレ写真に、漫画に、コラムなどとにかくなんでも。ただ、部誌というよりも最早市販雜誌として販売できるクオリティ。
オリジナルファイヤーとは
パフォーマンスが凄いのは分かったが、そもそもこの北京大学アニメクラブ「original fire」、一体どんな団体なのだろうか。
今回このブログの記事を書くに当たり、どうかoriginal fireについて紹介したい、とあおいちゃんに頼んだところ、以下の文章を送ってくれた。
公式の紹介文として、是非読んでいただきたい。
オリジナルファイヤーとは?
1998年10月28日、北京大学「オリジナルファイヤー漫画研究会」が誕生しました。
2007年、「オリジナルファイヤー漫画研究会」は、「オリジナルファイヤーアニメ・マンガサークル」に改名しました。15年間に渡り、アニメ・マンガ・ライトノベル鑑賞、コスプレ、同人創作、マルチメディア技術、絵画交流会など多種な活動を開催する総合的な同好会に発展し、健全な組織を作り上げ、2012年は自らの擬人化キャラクター「OFガールズ」も持つようになりました。
現在、北京大学最大レベルの学生サークルとして、在学会員が1,000人以上、OB/OG会員が2,000人に達しています。会員たちは毎日オンラインの交流を行っており、週ごとのサークル定例活動が行われます。大型イベントも毎年数回開催されています。
日常活動
オリジナルファイヤーの定例活動としては、
① 名作・ヒット作劇場版アニメの放映。時には分析・問答もあり。
② 「筆の会」と呼ばれる、絵画技法の交流会。画が上手な人が行う素人向けの講座であり、ゴム印、紙粘土、模型などの制作も含まれます。
③ ビデオ・オーディオ編集など。
④ ライトノベル創作をしている会員もあります。
会員たちの作品はオンラインに展示されるのみならず、実体化されることもあります。
マンガの貸出もサークルの日常活動の一環です。2014年11月、北京大学外国語学院明治大学漫画図書館閲覧室が正式に開館し、北京大学の学生全員に豊かなマンガ資源を提供しています。オリジナルファイヤーも図書館の日常運営と管理に参加しています。
周年祭
日常活動以外に、毎年に大型活動も数回開催しています。そのうちもっとも重要なのはオリジナルファイヤーの「誕生日」を祝うための周年祭です。2002年以来、このような周年祭はすでに13回ありました。2014年の十六周年祭は、アニソンの生歌、演奏、ダンス、相声(日本の漫才のようなもの)など、多様な演目が3時間ほど続いていました。百人以上の会員たちが二ヶ月の時間をかかって企画・準備したものです。
そのうち、毎年のコスプレ劇が一番注目を集めるものです。丹念なリハーサル・アフレコ・演出の結果として、往々にしてクライマックスとなり、二次元の世界を楽しむ絶好な雰囲気を作り出します。
先端講座
日本アニメ・マンガ業界との交流は我々のより高い目標です。2010年からほとんど毎年、オリジナルファイヤーは、北京大学日本語学科と日本明治大学国際日本学部が共同主催する「北京大学・明治大学日本アニメ・マンガ文化先端講座」の開催に参加しています。講座は、日本業界の知名人を誘い北京大学にて講座を開いていただき、中国の同好者たちに日本のアニメ・マンガ文化への深い理解のチャンスを作っています。2010年 「セーラームーン」監督の幾原邦彦先生、「機動戦士ガンダム」監督、作詞家、小説家の富野由悠季先生
2011年 「漫画の神様」手塚治虫先生の息子、「ブラック・ジャック」監督の手塚眞先生
2012年 初音ミクシリーズの「Vocaloid」プログラムの創始者、Crypton社社長伊藤博之さん
2013年 アニメ・映画・ゲーム音楽プロデューサー、作曲家の菅野よう子先生
おわりに
オリジナルファイヤーは北京大学のアニメ・マンガ同好者たちの楽園です。二次元を楽しむ同時に、中国と全世界のアニメ・マンガの発展にも注目しています。アニメ・マンガ文化の伝播という中日間の交流における独特な角度に立ち、我々も中日間の文化の絆の力になりたく存じます。
最後に、Original Fireが中国版のニコニコ動画である「bilibili」に載せたセーラームーンのパフォーマンス動画がこちら。凄いハイクオリティなので、是非!
あと、先程もリンクをはらせていただいた北京に留学されていた方が、オリジナルファイアの新歓活動についてブログに書かれていたのでシェア。
時間さえあれば、もっとゆっくり滞在して、是非活動にも参加してみたいと思える素敵なサークルだった。
もし今後北京大に留学してOriginal Fireに所属される方などいましたら、是非レポお願い致します^^!
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