This is a report about Comicon in Dubai!
ドバイでのコミコン、MEFCC2016 (Middle East Film and Comic Con)が2016年4月7日から9日にかけて、アラブ首長国連邦ドバイのWorld Trade Centerで開催されました。
「今更!?三ヶ月近く前じゃないか!?」
はい、仰る通りです。
ドバイでのイベント参加以降、私はモロッコ、スペイン、ポルトガルと周遊していたのですが、腰を落ち着けて記事を書く時間を取れずにおりました。今更感のある記事で申し訳ないです。
ですがその分特大ボリュームでお届けしたいと思います、中東最大のアニメ・コミックイベント!
記事構成はこんな感じです。
①ドバイのコミコンMEFCCとは
②ドバイのコミコン参加に至った理由
③現地からの生情報
④参加者100人へのアンケート結果に基づく中東のオタク分析
⑤中東とアニメの未来図
⑥ドバイの町中で見つけた「漫画寿司」!?
長くなりそうなので、前半①〜③と、後半④〜⑥に分けて投稿したいと思います!
①ドバイのコミコンMEFCCとは
MEFCCの正式名称は、「Middle East Film and Comic Con」。
2012年に始まり、2015年には実に5万人の来場者数を記録した、アラブ首長国連邦、ひいては中東最大のアニメーション・コミック・ゲームの祭典です。
メインのコンテンツはMarvelなどのアメリカコミックや映画ですが、日本アニメのファンも、中東各地から多数来場します。
主催はExtraCake PRAとThe Allianceというイベント企画会社。
自分は以前アメリカニューヨークのコミコン(Comicon)にも参加しましたが、イベントの雰囲気としてはとても似ていると感じました。
MEFCCは木曜から土曜日にかけての三日間にわたって行われます。
これって、日本人の我々からしたら少し不思議な日取りですよね。
ドバイ(アラブ首長国連邦)はイスラム国なので、金曜日が集団礼拝(サラート=ル=ジュマァ)の日として休日になるのです。週休二日の場合は、木金が休みだそうです。
我々が何の疑問も無く日曜日を休みとしているのも、キリスト教の安息日が由来だと考えると、なんだか騙されているような気持ちになります。(なお、全然このブログの趣旨とは関係無いのですが、日本で日曜が休日となったのは、1876年以降、欧化政策によるもので、それ以前は31日以前の1と6の付く日が休日だったそうです。)
会場のイメージとしては、行った事のある方は、東京ゲームショーや、コミケの企業ブースをイメージして頂くと分かりやすいかと思います。
より詳しい会場の様子は、③の項でお伝えしたいと思います!
②ドバイのコミコン参加に至った理由
そもそも何故ドバイのイベントに遥々日本から参加しようと思ったのか。
そもそもは今年の1月、友人の友人の紹介で、「中東とアニメ」に関心がある、という方にお会いしたのがきっかけでした。
その方の呼びかけで有志が集まり、「中東と、日本のコンテンツ企業やファンを繋ぎ、両地域の架け橋になる」をメインテーマに、企業ブースサイドで出展することになったのでした。
(実は自分、ブース出展しようと言われた際に、てっきりArtist Alley、いわゆる同人エリアでスペース取るってことかと勘違いしていたのですが、まさかの企業ブース側だと判明しておったまげたものでした)
今回MEFCCに共に参加したのは有志メンバーはこちら!
ドバイ会場近くでの集合写真。どうせならコスするか〜ということで、全員NARUTOコスでの参加です。
どーーーん!
私はサスケのコスで参加しました。
メンバーは実に多様で、某出版社勤務の方から、イギリスでコンテンツマーケティング学んでる学生さんから、普段はアニメ外の分野、組織運営等のフィールドで活躍していたり、スポーツの実況をやっている方まで。
ただ共通しているのは、日本から、地理的以上に文化的に遠いと思われがちな中東と日本を、アニメビジネスで繋ぐことに貢献したいとの想いです。
③現地からの生情報
実際にどんなアクティビティがイベント内で行われたかについては、実は別の方がブログで素晴らしいレポートを書いて下さっているのを発見致しました。
重複する内容でいたずらにネット上の総情報量を増やすのも美しくないので、ここは潔くリンクを貼らせて頂きたく思います。
→中東最大!ドバイのコミコン参加レポート(進め!中東探検隊)
以下の記事ではそれ以外の考察や現地事情について、参加記を交えながら綴りたいと思います。
一日目の朝に、会場近くのビジネスホテルにチェックインした我々は、初日は主に会場のセッティング。
MEFCCも、他の多くのアニメイベントと同じく、中日が最盛況で、一日目は準備、最終日は片付けの色あいが強いようです。
会場では、無料でクッキーや飲み物を配っているエリアがあり、何度も利用させて頂きました。ドバイは物価が高く、食事するにも躊躇う程(ケバブ一個が1000円とか)だったので、ここで食費を浮かせられるのは嬉しい。
今回私達がブースで行ったアクティビティは大きく分けて3つ。
(1)アンケート調査……約130名の現地参加者に、24項目からなる、日本の漫画やアニメ、ファン活動に関するアンケートを行いました。
(2)ネイルアート……日本でも人気の超実力派ネイルアーティスト、赤木桃さんが、キャラネイルをするために同行して下さりました!アバヤ(身体を覆うベール)を纏うムスリマ(イスラム教徒の女性)達にとって、ネイルは希少な目に見えるお洒落。はたして需要はどの程度あるのか、試してみようとの挑戦的試みでした。
(3)BL同人誌販売……挑戦的、と言えばこれ。宗教的に大丈夫か!?ギリギリのラインを攻めてしまいました。根っからの腐女子なわたくし、ドバイで自作のBL同人誌を売っちゃいました!!!
元々そんな意図は無くて、何か現地で販売物欲しいね〜というところから、以前自分が国際合同誌として出したBL同人誌(日本語がベースだが、一部漫画に英語の翻訳付き)の在庫が残っていたことを思い出して、じゃあちょっとだけ持って行ってみよう、と。
ブース運営的には、2と3で集客して、1のアンケート調査を行う、という感じです。
一日目はまばらだった来場者も、二日目には通路が人で埋め尽くされる程の大混雑となり、私達のブースにもひっきりなしに人が立ち寄ってくれました。
私達は「From Japan」を積極的にアピールしていたのですが、日本語で話しかけてくれる人や、コスプレをしている私達と写真を一緒に撮りたいと声をかけてくれる人、出し物であるネイルアートを試してみたい、と来てくれる方など、とにかく沢山!人が人を呼ぶ、という状態でした。
そして以下が桃さんがブースで実際に行ったキャラネイル一覧。この他にも、「このキャラを描いて!」と現地ファンが写真を見せると、はじめて見たキャラでも、小さな爪の表面にさっさかさーと描いてしまうのです。すごい!
ドバイにもネイルサロンはあるそうですが、勿論キャラクターネイルは無いとの事。料金は、描く柄によって、一本につき30DHから50DHの間で行いました。参加者の方は実に多様。アバヤ姿の女性もいれば、コスプレの方も。なかなかの盛況でした!
続いてBL同人誌の方。今回、別に同人誌を売る目的で行ったわけではないので、積極的に前面に置いたり宣伝したりはしなかったのですが、アンケートを書く机の横に平積みにして、その横の壁に数ページ、抜粋したものを貼りました。
数字としては、売れたのは三日間で20冊程。価格は、最初ひとつ10DH=300円(なお、日本では700円で頒布していたA5/70pの同人誌です)で売ったのですが、安過ぎるよ!と最初に買ってくれた子に言われたので、強気に30DHでそれ以降は売りました。
みんなの反応としては、勿論関心を示してくれるのは女の子達なわけですが、「きゃ〜〜〜やば〜〜〜い」みたいな感じ。
多くが笑いながら、「知ってる?これって本当はあんまりおおっぴらにしちゃいけないのよ!」と言ってる子もいたので、やっぱりちょっと控えた方がいい気もするのですが、潜在的な需要は、非常に大きいと感じました。
自分も漫画やイラストを描いているのよ〜!と見せてくれたムスリマの参加者さん。大手作家レベルのおそまつさんのイラストを見せてくれて、ドバイの女性達の描画力の高さに脱帽でした。
こうしたブース運営の合間には、会場内を歩き回って、他のブースの様子を見てみたり参加者の方とお話ししたりしていたのですが、そこで得た所感を!
イベントについて
・アメコミ75%:アニメ25%。しかしアニメは矢張り二級品的扱い。アメコミ系やゲーム会社が公式ブースを出しているのに対し、日本コンテンツはほとんどが非公式の個人商店。
・日本からの正規の出展としては、紀伊国屋による大規模な漫画・画集販売ブースと、タペストリー販売を主とする企業「Art Vivant Inc.」のブースのふたつ。
Art Vivantさんの話によると、日本では男性向けに売られる美少女キャラクターのイラスト集などを、女の子が買っていく場合が多い一方、タペストリーはあまり売れ行きが良くなかったとのこと。おおっぴらにそうした絵柄を飾る事が嫌厭されるためか。Art Vivantさんは、岡山にタペストリーを扱う子会社のベースを置き、絵師さんの承諾のもと、海外販売を一手に担い、台湾、香港などでのイベント販売実績があるそうです)
・一方で中国の漫画・ゲーム会社は、「37games」「eastday」などが出展しており、商談の場も設けていました。ブースさえ殆ど無い日本企業とは大きな違い……。
・Renovada Storeという企業ブースに、あきらかにパチもののワンピースやNARUTOのキャラの等身大フィギュアがありました。
・セル画や日本のグッズ等を個別輸入販売している業者・個人多数。
・企業ブースの方で売られるのは基本NARUTOやワンピース等の人気作品だった一方、うたぷり、黒バス、アイドリッシュセブンなどの女性向けコンテンツは、個人の仲介業をする人々が売っていました。売れ行きは極めて良好だそうで、黒バスやハイキュー!なんかは、初日で9割型売り切れてしまったそうです。
(池袋とか秋葉原の中古ショップで格安で仕入れたものを高値で転売。いい商売してはりまんなあ)
現地のファンについて
・ドバイではほとんどがinstagramを情報発信と交流のために利用。TumblrやFacebookは少数派だが、pixivはアカウントだけ持っているという人が多い。
・Artist Alleyでは、ラミカやポスターがメインなのは勿論、漫画を売る人も多数。漫画は英語のアラビア語のものが半々程度。Comissionも盛んに行われていた。相場は概して高く、スケッチで一枚30ドル、色付きで50ドル以上。
・上で紹介したブログの方も書かれていましたが、Artist Alleyの中で一人、明らかに!明らかにプロレベルの素晴らしい漫画を販売されている方がいらっしゃいました。
私一目で惹き付けられてしまいまして、三日間ブースまで会いに行ってしまいました。
執筆者はヨルダン人のDee Juusanさん。
彼女の作品は、英語版がDeeさんのウェブサイト(http://greyismanga.com/)で無料で読める他、書籍としても販売されており、スペイン語版も出版されています。
彼女のウェブサイトのAboutから抜粋です。
Grey is… is an online slice-of-life manga that revolves around humans’ heart & mind bond, presented through the eyes of two guys, Black who is all heart and White who is all mind, on their journey to obtain inner peace.
Each with his own kinds of struggles; child abuse, abandonment, death, misunderstanding but also, friendship, love, peace and family. Together, they try daily to live, love, fight, understand, survive and break free from their past and present through to a brighter future.
“Grey is… is the life that nobody wants to live but the bond that everyone craves.”
5巻目の冒頭の台詞を抜粋させて下さい。
「”Humans are interesting”, that was a line I heard often; on television, in books, from friends. I personally find it interesting when humans are referred to as “interesting.”」
最初のページでこの言葉を目にした瞬間、背筋にぞくりとくるものがありました。
画集や、関連グッズも販売されていて、私本当なら全て欲しかったのですが、
値段が一冊3000円と日本の漫画と比べると非常に高くて、お財布が悲鳴を上げていたので、泣く泣く断念致しました。
Deeさんは現在日本での出版も目指し、漫画賞への応募もされているそうなので、本当に、いつか彼女の作品が日本でも読める事を心から楽しみにしています。皆さんも是非、彼女のwebsiteでこの素晴らしい作品をチェックしてみて下さい!
ちなみに、ホログラム処理を施したしおりなど、日本の同人イベントでもよく目にするグッズが売られていたので、一体どこの印刷会社で作ったのかと聞いた見たところ、JIMI Agency.netというサイトを使っているようです。
・同人誌やグッズの印刷会社は、韓国や、中国のもの(Ali Express)を利用する人が多い。技術力の高い日本の印刷業の海外展開も望まれるところ。
コスプレについて
・比較的自由。NARUTOのサクラや初音ミク、ラブライブのキャラクター等が見られましたが、レイヤー数がそこまで多いわけではなく、参加者全体の10%未満といった印象。特に、女性の男装は少なめで、男性の女装に関してはほとんど見られませんでした。中にはアバヤ姿のままコスプレしている女性レイヤーもいらっしゃいました。
では以下、現地で見つけたレイヤーさん達の写真を何枚か。
・元々マスクをしている金木や鳴狐のようなコスプレイヤーもいたが、特段数が多かったというわけでもありませんでした。
クウェートからのコスプレイヤーさんがエロかっこよかったです……!。
・夜に開かれたコスプレトーナメント参加者は圧倒的にアメコミの方が多かったのですが、クオリティも造形を中心に高かったです。
今回はここまで。
次回は、現地で100人以上を対象に行ったアンケート結果から中東のアニメオタクについて分析し、これからのアニメと中東の未来について考えたいと思います。ドバイで見つけた「Manga Sushi」という不思議レストランのレポートも!
→イスラム圏ドバイのコミコン、MEFCC参加記②
ではでは〜!
コメント